【衝撃】「機内モード」の目的は飛行機を守るためだけじゃない?空と地上の”ITインフラ防衛”の真実【ITトリビア_003】
飛行機に乗る際、必ずアナウンスされる「スマートフォンを機内モードに設定してください」という案内。
これを聞いて、多くの方は「スマホの電波が飛行機のレーダーや計器を狂わせるから」と考えているはずです。
もちろんそれは正解であり、航空の安全を守るための非常に重要なルールです。
しかし、IT・通信インフラの視点から紐解くと、そこにはもう一つの巨大な目的が隠されています。
それは、「地上の携帯電話ネットワークを通信障害から救うこと」です。
時速800kmで空を飛ぶ「電波の塊」
私たちが地上でスマホを使っている時、端末は常に最も電波の強い「近くの基地局」を探し、自動で接続(ハンドオーバー)を繰り返しています。
地上であれば建物の影などの障害物があるため、スマホが一度に見つけられる基地局はせいぜい数個です。
しかし、飛行機は上空1万メートルを「時速800キロ」という猛スピードで飛びます。障害物のない上空からは、地上の数百という基地局が丸見え(見通し内)の状態です。
もし、乗客200人のスマホが機内モードになっていなかったら、一体どうなるでしょうか?
・眼下にある数百の基地局を同時に見つける
・時速800kmで「接続させて!」「あ、通り過ぎた!次!」と要求を出し続ける
・これが乗客200人分、一斉に発生する
これはITインフラの視点で言えば、「空飛ぶ端末群が、地上のルーターやサーバーに対して意図せずDDoS攻撃(大量のアクセスでパンクさせるサイバー攻撃)を仕掛けている状態」に等しいのです。
目的は「地上のITインフラ」の崩壊を防ぐこと
この異常な速度での大量の接続要求は、モバイルネットワークの設計において完全に想定外の負荷です。
一つの基地局にアクセスが集中すると、処理能力を超えてしまう「輻輳(ふくそう)」と呼ばれる通信障害の引き金になります。
航空機の安全とは別に、通信技術の観点からもこの「ネットワーク保護」の設計思想は重要視されています。エンジニア向け情報コミュニティの専門記事でも、機内モードは「地上の基地局への電波放出を防ぐこと」が主目的であり、閉じたローカルネットワーク内での通信は許容される前提になっていると指摘されています(※1)。
機内モードにして「地上の基地局への通信」さえ物理的に遮断してしまえば、機内という閉じた空間でのWi-FiやBluetoothは使っても問題ない。現在のスマホの仕様は、この明確な設計思想に基づいています。
【最新動向】5G時代に再燃した「航空機 vs 電波」問題
「地上の基地局を守るため」という通信側の理由は長年変わりませんが、近年、飛行機側の安全基準において新たなITの脅威が生まれました。それが「5G通信」です。
2020年代に入り、超高速な5G通信網が世界中で整備されました。
しかし、5Gで利用される特定の周波数帯(Cバンド)が、飛行機が高度を測るための「電波高度計」の周波数に近すぎたため、電波干渉によって計器が誤作動し、最悪の場合墜落に繋がるリスクが浮上したのです。
実際にアメリカでは、空港周辺での5G基地局の稼働を延期するなど、航空業界と通信業界で大きな対立問題に発展しました。
スマホが進化し、電波が強力になればなるほど、機内モードが担う「計器の保護」という役割は、過去のルールではなく現在進行形の重大なセキュリティ対策になっているのです。
テクノロジーが「機内モード」を終わらせる日
空の安全基準が厳しくなる一方で、欧州連合(EU)では全く逆の画期的なアプローチが始まっています。
機内に「ピコセル(超小型の基地局)」を設置し、乗客のスマホを地上の基地局ではなく「機内のピコセル」に接続させるという計画です。データはそこから衛星通信を経由して地上へ送られます。
これにより、地上の基地局へのDDoS攻撃的な負荷を防ぎ、かつ高度計への干渉リスクもコントロールすることで、「機内モードを不要にし、空の上で5Gを解禁する」という未来に向けた法整備が進んでいます。
「飛行機を最新の電波干渉から守るため」「地上のインフラをアクセス過多から守るため」
次に飛行機に乗って機内モードのボタンを押す時は、空と地上の巨大なITネットワークの仕組みに思いを馳せてみてください。
情報のソース・参考資料
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(※1) 引用元
機内モードは、地上の基地局にアクセスしようとするセルラー通信の電波放出を防ぐことが主目的であり、閉じたローカルネットワーク内での通信は許容されるという設計上の前提があります。
・記事名: 機内モードって本当に必要?通信にまつわる“なんで?”をわかりやすく解説
・著者: nucomiya
・サイト名: Qiita
・URL:https://qiita.com/nucomiya/items/c73f5911d7ae234b6111
