あの「かじられたリンゴ」じゃなかった?Appleの「幻の初代ロゴ」に隠された驚きの秘密【ITトリビア_001】

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 世界中で最も認知されているロゴの一つと言っても過言ではない、Appleの「かじられたリンゴ」のマーク。

 しかし、1976年の創業当時に使われていた初代のロゴマークが、現在とは似ても似つかない「非常に複雑な絵画」だったことをご存知でしょうか?

 実は、最初のAppleロゴには、あの有名な物理学者アイザック・ニュートンが描かれていたのです。

 今回は、わずか1年足らずで消滅してしまった「幻の初代ロゴ」の真実と、現在のロゴ誕生にまつわる「ある都市伝説」の裏側をご紹介します。


まるで古文書?複雑すぎた「幻の初代ロゴ」

 Appleの初代ロゴをデザインしたのは、「第3の創業者」と呼ばれたロナルド・ウェインという人物です。

 スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアックと共にAppleを立ち上げた彼が、ペン画で緻密に描き上げたロゴは、まるで19世紀の木版画のようなデザインでした。

  • 木の下で本を読むアイザック・ニュートン

  • 頭上で今にも落ちそうに光り輝く「リンゴ」

  • 周囲を囲むリボンに書かれた「APPLE COMPUTER CO.」

 さらに、額縁部分にはイギリスの詩人ウィリアム・ワーズワースの詩の一節が刻まれていました。

“Newton… a mind forever voyaging through strange seas of thought… alone.” (ニュートン… 見知らぬ思考の海を、永遠にただ一人で航海し続ける精神)

 知性と探求心を象徴するロマンチックなデザインでしたが、現代のAppleが持つ「シンプルで洗練されたイメージ」とは真逆のものでした。


ロゴ作者の「もったいなすぎる」決断

 実は、このロゴをデザインしたウェインは、会社設立からわずか12日後にAppleを去っています。

 ジョブズたちの破天荒な経営方針による借金リスクを恐れた彼は、自身の持ち株10%(現在なら数十兆円の価値)を、たった800ドル(当時のレートで約24万円)で手放してしまったのです。

 古めかしく複雑なロゴを描いた彼自身が、Appleの革新的な未来を信じきれなかったという事実は、なんとも皮肉な歴史の巡り合わせと言えます。


なぜ初代ロゴは姿を消したのか?

 この複雑な初代ロゴは、最初の製品「Apple I」のマニュアルなどに使用されました。しかし、ジョブズはこのデザインをすぐに変更することになります。

 最大の理由は、ターゲット層の変化です。

 当時の「Apple I」は、むき出しの電子基板を自分で組み立てる「一部のコンピュータ・マニア向けの製品」でした。

 しかし、翌年に発売を控えていた次世代機「Apple II」は、プラスチックケースに覆われた「一般家庭向けの完成品PC」です。ジョブズは、自社の製品を誰もが親しめるモダンな家電にしたいと考えており、縮小すると黒く潰れてしまう複雑なニュートンの絵は、そのビジョンに全く合致しなかったのです。


「かじられたリンゴ」の誕生と、よくある誤解

 1977年、「Apple II」の発売にあたり、ジョブズはアートディレクターのロブ・ジャノフに新ロゴのデザインを依頼します。

 ジャノフは、スーパーで買ってきたリンゴを様々な角度から観察し、あの有名な「かじられたリンゴ」を生み出しました。

 ここで、IT業界でまことしやかに語られる「ある都市伝説」があります。

❌ 都市伝説: 「かじる(Bite)」と、コンピュータの容量単位である「バイト(Byte)」を最初から掛けてデザインされた。

⭕️ 真実: ジャノフ自身がインタビューで明かしていますが、これは完全な偶然です。

 かじった跡をつけた本当の理由は、「シルエットがサクランボやトマトと間違えられないようにするため(サイズのスケール感を示すため)」でした。

 デザイン完成後に、同僚から「コンピュータ用語のByteと同じだね」と指摘され、ジャノフ本人も「マジで!?」と驚いたという*奇跡的な偶然(ハッピー・アクシデント)だったのです。

(※ちなみに、当時のApple IIの最大の売りであった「カラー表示機能」をアピールするため、1998年までは6色のレインボーカラーが採用されていました)

 難解な「ニュートンの絵」から、究極にシンプルな「かじられたリンゴ」へ。 この劇的な変化は、「複雑なテクノロジーを、誰にでも使いやすくする」というAppleの原点そのものです。

ℹ️ 情報のソース・参考資料

  • 『スティーブ・ジョブズ』(ウォルター・アイザックソン著):Apple IからIIへの変遷、ロナルド・ウェインの離脱エピソードについて。

  • Rob Janoff氏の公式ウェブサイト及び各種インタビュー:BiteとByteの掛詞が意図したものではなく偶然であったこと、デザインの真の意図(誤認防止)について本人が解説。

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